6月の「労働市場改革指針」に向け、政府内の議論は? リスキリング支援拡充の方向性を探る

政府は「リスキリングの支援や職務給の確立、成長分野への雇用の移動を三位一体で進め、構造的な賃上げを実現する」(岸田文雄首相)として、6月に労働市場改革の指針をとりまとめる方針です。

今回は、2月に開かれた「新しい資本主義実現会議」(第14回)の資料や議事要旨から、政府がいま検討しているリスキリング支援の方向性を探ります。

目次

政府資料より抜粋

○ 日本の在職者向けの学び直し支援策は、企業を通じた支援(人材開発支援助成金、公共職業訓練(在職者訓練))の金額が全体の75%だが、個人への直接支援(教育訓練給付)の額は全体の25%にとどまる。

○ 個人への直接支援は、過去5年間での伸びも限定的。労働移動の円滑化のためには、企業経由が中心となっている在職者支援を、個人経由中心に見直す必要があるのではないか

○ この際、拡大する個人経由の支援にあたっては、キャリアコンサルティング等を受けていただく必要があるのではないか。

議事要旨より有識者・政府側の発言抜粋

〇米良はるか氏(READYFOR株式会社代表取締役CEO)

「リスキリングの補助金を直接個人に出していく策も非常に有用。(中略)民間のキャリアコンサルティング支援サービスと連動してキャリアコンサルティングの枠を広げて、個人に補助していくということを考えていただきたい」

〇澤田拓子氏(塩野義製薬株式会社取締役副会長)

「在職中のリスキリングを推進したいとは思うが、離職後にリスキリングを考慮する人も増えており、従来の雇用保険制度の枠組みに加えて、個人に対する政策的支援をぜひお願いしたい」

〇柳川範之氏(東京大学大学院経済学研究科教授)

「国の学び直し支援はもっと個人向けに重点を置くべきである」

〇芳野友子氏(日本労働組合総連合会会長)

「労働者個人への直接支援策は、希望する誰もが幅広く利用できる制度とするとともに、訓練給付の拡充にとどまらず、キャリア形成に資する支援策とセットで充実させる必要がある」

〇加藤勝信厚労相

スキルや経験を蓄積しながらキャリアアップを図るための継続的なキャリアコンサルティング支援の拡充、多様な働き方の選択を力強く支える雇用のセーフティーネットの強化、職業情報提供サイト(日本版O-NET)の整備や、ハローワークと民間職業紹介事業者との基礎的情報の共有など、労働市場の見える化の一層の推進など、インフラ整備を通じた労働市場の機能強化に取り組んでまいる」

〇岸田文雄首相

国の学び直し支援策については、個人への直接支援を中心に見直す。また、海外と同様に、在職期間中のリスキリングの習慣の形成を図る。その際の支援については、キャリアコンサルタントが求人、求職に関する幅広い現場情報に基づき助言が行えるよう、官民の持つ情報の共有化を進める。また、ハローワークについても、コンサルティング機能の強化を図る

これらの議論をみると、リスキリングをする個人に対する金銭的支援拡充や、キャリアコンサルティングの活用促進が進められる可能性がありそうです。

日経電子版も10日、教育訓練給付の拡充を報じています。

失業給付、転職時の支給迅速に 2カ月超→7日程度に – 日本経済新聞 (nikkei.com)

おわりに

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