日銀・植田和男新総裁 2/24国会で語った所信(文字起こし) 

2月24日、日本銀行の植田和男新総裁が国会で所信聴取と質疑に臨みました。 

植田新総裁が国会で何を語ったのか、冒頭発言全文の文字起こしをしました。 

「今後とも情勢に応じて工夫をこらしながら、金融緩和を継続することが適切だ。これまで日本銀行が実施してきた金融緩和の成果をしっかりと検証し、物価安定の達成というミッションの総仕上げを行う5年間としたい」などと語りました。

今後の経済・金融の動きを考えるうえで、参考にしてみてください。 

目次

植田新総裁の所信聴取(冒頭発言)

私は内外の大学において、主にマクロ経済学、金融論、国際金融論の分野で、研究と学生の指導にあたってまいりました。またこの間、平成10年から17年までは、審議委員として日本銀行の政策決定、業務運営に参画いたしました。委員退任後はアカデミズムの世界に戻りましたが、日本銀行との関係では、金融研究所特別顧問などの立場でアドバイスを行ってまいりました。また金融政策の理論や実践について、国際コンフェレンスなどの場で、内外の学者だけでなく、海外中央銀行、市場関係者等の実務家とも議論を行ってまいりました。

まず、金融政策について私の考え方を述べたいと思います。金融政策は景気と物価の現状、そして先行きの見通しに基づいて運営する必要があります。現在、我が国はコロナ禍から持ち直しているところですけれども、経済や金融市場をめぐる不確実性は極めて大きい状態です。消費者物価の上昇率は 4% 程度と、目標とする2%よりも高くなっています。

しかし、その主因は輸入物価上昇によるコストプッシュでありまして、需要の強さによるものではありません。こうしたコストプッシュ要因は今後減衰していくとみられることから、消費者物価の上昇率は、23年度半ばにかけて2% を下回る水準に低下していくと考えられます。

金融政策の効果が発現するまでには、ある程度の時間がかかります。金融政策の理論では、需要要因による物価上昇には、予防的に対応して、需要を抑制する一方、コストプッシュによる一時的なインフレ率の上昇には直ちには反応せず、基調的な物価の動向に反応するというのが標準的な対応と考えます。そうでないと、金融引き締めによって、需要を減退させ、景気悪化とその後の物価低迷をもたらすことになってしまいます。

この点、我が国の基調的な物価上昇率は需給ギャップの改善や中長期の予想インフレ率の上昇に伴って、ゆるやかに上昇していくと考えられます。ただ、目標の 2%を持続的、安定的に達成するまでにはなお時間を要すると考えています。

こうした経済物価情勢の現状や先行きの見通しにかんがみれば、現在、日本銀行が行っている金融政策は適切であると考えています。

金融緩和を継続し、経済をしっかりと支えることで、企業が賃上げをできるような経済環境を整える必要があります

もし私を日本銀行総裁としてお認めいただきましたならば、政府と密接に連携しながら、経済物価情勢に応じて、適切な政策をおこない、経済界の取り組みや、政府の諸施策ともあいまって、構造的に賃金が上がる、そういう状況をつくりあげるとともに、一時的でなく、持続的、安定的な形で、物価の安定を実現したいと考えております。

次に日本銀行の金融政策について、やや長いタイムスパンで少しお話してみたいと思います。

私が審議委員に就任した平成10年当時、日本経済はバブル崩壊から金融危機を経て、デフレに突入したところでございました。

一方で政策金利はすでに0.5%を下回る水準まで低下しており、通常の金融政策の範囲では、緩和の余地がほとんど残されていませんでした。このため、日本銀行は ゼロ金利政策、時間軸政策、量的緩和政策など非伝統的と言われた金融政策を世界で初めて、次々に導入いたしました。私はこれ、立案過程に他の政策委員と相談しながら主に理論面から参画いたしました。

これらの政策のいくつか、たとえば時間軸政策はその後、欧米の中央銀行でもフォワードガイダンス等として採用されるなど、世界の金融政策の標準にもなっていきました。

私が審議委員を退任した後も日本銀行は量的質的金融緩和、マイナス金利政策、イールドカーブコントロールなどを採用し、世界でも、また、歴史的にも、大規模な金融緩和を実施してきました。これらは実質金利の引き下げを通じて、企業収益や雇用の改善などに貢献し、デフレではない状況を作り上げたと考えています。

一方で様々な副作用も生じていますが、先ほどお話した、経済物価情勢を踏まえますと、2% の物価安定の目標の実現にとって必要かつ適切な手法であると思います。

今後とも情勢に応じて工夫をこらしながら、金融緩和を継続することが適切であると考えます。これまで日本銀行が実施してきた金融緩和の成果をしっかりと検証し、新日銀法施行以来、25 年間、日本銀行にとっても、また私自身にとっても積年の課題であった物価安定の達成というミッションの総仕上げを行う5年間としたいと考えています。

以上、金融政策についてお話しましたが、日本銀行のもう一つの重要な責務は、金融システムの安定です。我が国経済にとって金融循環機能が円滑に発揮されることは極めて重要です。人口減少など我が国の金融機関、金融システムをとりまく環境が厳しさを増す中、この面でも適切な施策を実施してまいります。また、銀行券の発行と流通、決算システムの運営、国庫金に関する業務など、いずれも国民経済に必要不可欠なものです。そうした、社会のインフラを安定的に運営していくために、日本銀行の約5000人の職員と力を合わせて、日々業務にあたっていきたいと考えています。

どうもありがとうございました。

おわりに 

弊社では、制度改正等の趣旨や影響を踏まえた上で、それぞれの状況に応じて有効活用できるよう会計・財務・税務アドバイザリーサービスを提供しております。 

また、マネーリテラシー養成に向けた社会人向け金融教育・リスキリングサービスも提供しているため、ご支援が必要でしたら、是非お気軽にお問い合わせください。 

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